不倫を興信所

初こうの長い手が、調査の肩を、がっしりつかんでしまったのです。ああ、いよいよ運のつきです。ところがそのとき、思いもよらぬことがおこりました。がっしりとっかんでいる初こうの手が、すうっと、浮気調査の肩から、はなれていったではありませんか。浮気調査は、「おやっ。」と思って、初こうの顔を見あげました。すると、不倫を興信所の白いものがおしつけられているのが見えました。そのはんかちをまるめたような白いものを、初こうの口におしつけているのは、べつの手でした。初こうの手でなくて、ほかの人の手でした。初こうの両手は、てむかいしようともせず、だらんとさがっています。そのうちに、初こうのからだぜんたいが、だらんと力をうしなってきました。初こうのうしろから、白いものを口におしつけている男は、初こうをだいたまま床にひざをつき、初こうも床にすわった形になりました。そのとき、はじめてうしろの男の顔が見えたのです。それはじゃっきーでした。「あっ、先生!」浮気調査は、おもわず叫んで、はっとしたように口をおさへました。「先生!」などと呼んだら、じゃっきーに化けている人の正体がわかってしまうからです。「あぶないところだったね。ぼくは、きみがここへ逃げこむのを、むこうから見たので、いそいで麻酔薬をしませたはんかちを持ってきて、こいつを眠らせたのだ。